カナダの栄養士さんに5の質問

 

この記事は、2016/10/1に執筆されたものです。

2018/2/23に加筆・修正しました。

2019/4/12に加筆・修正しました。

 

 

先日、カナダの栄養士さん(Dietitian)と

お話しする機会に恵まれました。

とても有益な時間となり、

ぜひ、特に、栄養学専攻の学生さんたちに

シェアしたいお話がありますので、

記事を書かせていただきますね。

 

 

【この記事のもくじ】

 

 

カナダの栄養士免許制度についてちょこっと説明

 

カナダには、食事のアドバイスなどを

してくれる日本の栄養士的存在の中でも、

ダイエティシャン(Dietitian)と

ニュートリショニスト(Nutritionist)の

2種類の人物が存在します。

 

ダイエティシャンは、

大学などの養成課程を経てから

州ごとの登録栄養士試験

(Canadian Dietetic Registration Examination)に合格後、

一定期間(現在は1年間と定められている!)の

実習経験を積んだのち、なることができます。

 

一方、ニュートリショニストは

ダイエティシャンほど

養成課程は厳格に定められておらず、

複数の機関で、ダイエティシャンよりも

短い時間で資格を手に入れることができます。

この資格を持った方々は、

個人で栄養コンサルタントや

料理家として働くことが多いそうです。

医療機関などで患者さんに栄養指導はできません。

資格というよりも、

検定と言った方がしっくりくるかもしれません。

 

↓ここまで調べてわたしが抱いた印象↓

  • 実習期間1年って長っ!(日本は4週間)
  • ダイエティシャン=日本の管理栄養士
  • ニュートリショニスト=日本の栄養士みたい。区別が似てる。

 

 

お話を伺った栄養士さんについて

 

お名前はキャリーさん。

今年2016年の6月に

実習を終えたばかりのルーキー。

現在、フリーランスの

ダイエティシャンとして働いており、

病院とフィットネス会社で

栄養指導や運動指導をしています。

 

今回はキャリーさんに、欧米の栄養士さんに

聞きたかった5つの質問をぶつけてみました。

 

 

質問その1 「”自国(カナダ)の食文化”を外国の方にどう説明しますか?」

 

A1 「難しいですね。

カナダの文化は色々な国の文化が

交わって構成されているから、

正直コレという食文化はありません。」

 

→これは、他のカナダ人の人たちに

聞いても同じ答えが返ってくる。

栄養士さんもキッパリこういうから、

何だか潔い。

少なくとも日本のように、

「自国の食文化とは」と尋ねられたときに、

お寿司やお味噌汁など

何か料理をパッと想像できたり、

一汁三菜といった言葉が思い浮かぶ状況は

決して当たり前のことではないのですね。

 

ただ、わたしは、この色々な食文化が

混ざっている状況そのものが、

1つの食文化だと思っています。

 

様々な人種が入り混じるということは、

様々な宗教が入り混じるということ。

様々な宗教が入り混じるということは、

食材に対する様々な制約が

入り混じるということ。

だからか、代替食品のバリエーションが豊富で、

日本で見かけない料理・食材がたくさんあります。

 

カフェやレストランに行けば、

どこも必ずと言っていいほど

ベジタリアン向けの料理を用意していますし、

ベジタリアン・ヴィーガン

(=完全菜食主義:平たく言うと、

ベジタリアンよりもさらに

動物由来の食品摂取を避ける人たち)

専門のレストランもあります。

 

しかも、それがまたよく工夫されていておいしい!

植物性と侮るべからず!

 

豆乳から作られたチーズ、

大豆が主材料の畜肉不使用のソーセージ、

食感も見た目も肉にそっくりの

ソヤボール(大豆を固めたもの)。

 

Vegetarian Grain Meat(ベジタリアン用のお肉)たるものが、

カナダのごく普通のスーパーには並んでいる。

 

 

豆乳はもちろんのこと、

ライスミルク、ヘーゼルナッツミルク、

ココナッツミルク(←無脂肪乳のように薄い)

といった牛乳の代替品を、

すぐに手に入れることができます。

 

 

 

持ち運べる食材が限られているはずの

屋台のホットドッグ屋さんでさえ、

ヴィーガン向けのホットドッグ

販売している事を知ったときは驚きました。

それも、主原料にナスを使ったソーセージか、

大豆を使ったソーセージの

2種類から選べたから、さらに驚き。

 

体質にも差があるからか、

グルテンフリーのパンやお菓子、

パスタも当たり前のように見かけます。

 

さらに、食に対するポリシーも様々だからか、

野菜を始めとするオーガニック食品を

日本よりもはるかに簡単に手に入れられます。

同じアボカドでも、オーガニックと

非オーガニックが並んで置いてあって

選べるようになっていたりします。

(値段はやはりオーガニックの方が高い)

 

日本との比較になってしまいますが、

このような食環境はわたしにとって

とても新鮮で、決して

当たり前のものではありません。

 

カナダと言っても広いし、

食文化という言葉自体指すものが

多いので括ることは難しいですが、

今のところ

「様々な人種が混ざった結果の、食の選択肢広さ」が、

「カナダの食文化の1つ」という印象です。

 

 

質問その2 「日本で後ろ向きな意味で使われている、”食の欧米化”という言葉について、どう思いますか?」

 

A2 「真実だと思う。

私たちはよく、obesogenic

(obesity=肥満+genic=生み出す)

という言葉を使いますが、

欧米の食や環境は肥満を誘発すると思います。

 

ファストフードの一食の提供量や

飲み物の量はどんどん多くなっていますし

(スタバにはトレンタという、

ベンティサイズ(約500ml)を超える900ml超のサイズがある)

広告はますます誇張されたものに

なっていっています。

 

他国で欧米の食をネガティブな

印象で受け取られても、当然かもしれません。

ただ、肥満を招いているのは食事だけでなく、

生活形態の変化もあると思います。

今は多くの人が運転中、電話中、

何かをしながら、

本当に自分は今食べる必要があるのか

考えずに食べています。

そして、食事を楽しんでいない。

家族と一緒に食事もしなくなってしまいました。

何を食べるかも大切ですが、

同時にどう食べたかも大切だと思っています。」

 

→カナダの食環境は肥満を誘発すると、

栄養士さんも懸念しています。

貧富の差に比例するように、

食事内容の質に差があるのも事実です。

野菜は値段の割にお腹いっぱいにならず、

結果安いファストフードを

毎日の食事にした結果、

肥満や糖尿病になるという現代の深刻な問題。

食費を安く抑えた結果、生活習慣病などの

治療費に大金がかかるという、なんとも皮肉な話です。

 

「生活形態の変化により、

本当に自分は今食べる必要が

あるのかを考えずに食べている」

「何を食べたか、と同時にどう食べたかも大切

という言葉が強く印象に残りました…。

 

 

質問その3 「大学ではMSG(モノソディウムグルタメイト)について学びましたか?」

 

A3 「はい、学びました。

大学では、MSGはナトリウムとアミノ酸が

融合した物質で、科学的には

身体に危険ではないと学びました。

しかし、今でも確かな根拠はないものの、

実際MSGを摂った後に頭痛などを

感じる人がいるのも事実です。

そういう人は、摂らないと決めているし、

無理して摂ることはないでしょう。」

 

→カナダにきて驚いたこと、

それはMSGに対してとても敏感であること。

 

MSGとは、モノソディウムグルタメイト、

グルタミン酸ナトリウムの略です。

日本では、顆粒のうま味成分の素の

主原料として広く用いられています。

 

カナダ人数人に聞いても、

「ああ、体にすごく悪いんだってね」と

みんな口を揃えて言います。

 

こう言われるようになった事の発端は、

30年ほど前に、MSGが使われた

中華料理を食べたアメリカ人の人たち

数人が顔のほてりや動悸、

背中の無感覚などを訴えたことのようです。

 

これが由来となって、

最近まではこの症状は

チャイニーズレストランシンドローム

(中華料理症候群)と呼ばれていました。

 

WHOや米国機関による調査によると、

MSGとこれら症状の科学的関連性は見られず、

グルタミン酸ナトリウムの1日の

上限摂取量も現在特に設けられていません。

しかし、摂取後に頭痛などを

訴える人がいるのも事実のようです。

 

日本では、先ほども述べたように、

顆粒のうま味の素などとして

結構身近なMSG。

日本料理に欠かせない「うま味」を

否定されたような気持になって悲しくなり、

質問しました。笑

ただ、わたしが無知だっただけで

日本の人でもMSGを摂取すると

体調が良くなくなる方がいるようです。

ただ、カナダのダイエティシャン養成課程では

今のところ「科学的には問題ない」

と教えているのですね。なるほど。

 

 

質問その4 「栄養士としてのモットーは何ですか?」

 

A4 「2つあります。まず、わたしは

食事はエネルギー源であり、味わいであり、楽しみである

という言葉が好きです。

食事を、ただの燃料としてだけではなくて、

味わい、家族や友人など一緒に

食べることそのものを楽しんでほしいと思っています。

あとは、体に良いものは、

必ずしもたくさん摂取すればするほど良い

というわけではないこと。

これをモットーとして、人々にきちんと伝えていきたい。」

 

→私も同感です。

食事はエネルギー源としても

とても大切だけれど、

だからといってポテチだけ

食べて健康に生きることはできない。

可能な限り色々な食材と

調理方法を用いて、

舌と目で食事を楽しむことは、

体も心も良い方向に導いてくれそうです。

 

 

質問その5 「子ども達に健康的な食事について教えるのは、誰ですか?日本のように、食育の時間や給食はありますか?」

 

A5 「カナダの小学校では、

お昼は各自持参する形式が多いです。

日本の給食の仕組みは、

とても良いものですね。

カナダでも、現在の昼食形式を

見直す動きがみられつつありますが、

まだ実現には至っていません。

やはり、家庭の料理が一番

子どもに影響を与えていると思います。」

 

→カナダでは給食がない分、

子どもにとっての食事のモデルは100%、家の食事。

良い食習慣も、悪い食習慣も、

親から子へと引き継がれる。

これは少し心もとない感じがしました。

野菜をおいしく食べられる食事とは

どんなものなのか、

炭水化物・たんぱく質・脂質を

バランスよく含んだ食事とはどんなものか、

といった食事のモデルを視覚的に

学べる給食は印象に残りやすいし、

保護者も巻き込めるので

効率のいい食育方法だと思います。

 

個人的な意見にはなってしまいますが、

今振り返ると、給食の影響力は

わたしにとってとても大きいものだったと思います。

 

すごく単純に「野菜を食べることは良いこと」

「残さず食べることは良いこと」

「炭水化物・たんぱく質・脂質の役割」

「食べる楽しさ」

「バランスのとれた良い食事とはどのようなものか」

などについて、給食を食べたことによって

意識の中に刷り込まれました。

 

給食費に関する問題がありますが、

わたしはやっぱり給食制度は

今後も残していきたい制度だと思っています。

 

 

インタビューを終えて

 

カナダの栄養士さんも、

食を通して人々を健康にしたい

という気持ちはもちろん同じでした。

カナダの成人肥満率は約25%。

日本は4%前後。

(情報リソース:OECD Update 2017)

 

この差の理由は一言では

説明できないと思いますが、

子どものころの食環境がどうだったかが、

大きな鍵だといわれています。

 

その背景にはさらに、

保護者の子どものころの食環境が

影響していたり、

貧富の差だったり、

実に様々です。

 

さらに、最初の方にも書きましたが、

現代の人たちは忙しくしていて、

何かをしながら食べることが多い。

 

「何を食べたか」と同じくらい、

「どう食べたか」も大切であることを、

わたしも日本で人々に伝えたい。

 

話は変わりますが、最近は1人で

食事をすることが多くて

1人暮らしではないのに

1人暮らしの寂しさを痛感しています…。笑

 

さて、長くなりましたが、

読んで下さった方、

ありがとうございます!

 

そして最後に、このような

貴重な機会を得られたのは、

トビタテ留学JAPAN関係者

みなさまのおかげです。

本当に、ありがとうございます。

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ABOUT US

管理栄養士の養成課程を卒業後、大学院に進学。 そこで約半年間休学し、カナダ、ニューヨーク、カンボジアで食に関連したインターンシップに従事した。 ブログでは食、健康、大好きな旅に関する情報を発信する。 詳しくは「ミチについて」にて。 連絡は「ミチに連絡する」からメッセージを送っていただけます。